難聴と認知症の関係を知ろう!

難聴と認知症の関係性とは?

小川 郁先生と繁田 雅弘先生の談話より引用

難聴は認知機能低下を引き起こす危険因子のひとつです。

現在、難聴と認知症の関係について、さまざまな研究が進められています。2015年に厚生労働省が公表した「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」において、難聴は認知症の危険因子のひとつとして挙げられています。
また、イギリスの医学雑誌ランセットによる国際委員会が2017年に国際アルツハイマー病協会会議(AAIC)で行った発表では、認知機能低下の危険因子のうち予防可能な危険因子は9つあり、その筆頭に難聴が挙げられました。

 

このように、難聴と認知症の関係は、徐々に明らかになってきています。そして、難聴への対策をはやめに行うことで、認知機能の低下を少しでも遅らせることができるのではないか、という視点で社会的な注目が集まっています。しかしながら、難聴と認知症を、単純にイコールで結び付けることは出来ません。(談:小川 郁先生)

難聴がもたらす社会的な孤立により認知機能低下のリスクが上がります。

認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因が異なります。たとえば、認知症の中でもっとも多くの割合を占める「アルツハイマー型認知症」は、脳の中にアミロイドβというタンパク質が蓄積することで起こります。このアミロイドβの蓄積に難聴が関係しているかというと、そうとは考えられません。つまり「難聴は、認知症の原因となる事象に直接かかわりがある」とは考えにくいのです。それよりも、「難聴は、認知症の診断にかかわりを持つ」と考える方が自然です。いくつかの研究では、高齢者の社会的な孤立(狭い範囲での社会関係、ひとり暮らし、他者との活動への不参加など)が認知症のリスク増加や認知機能の低下に関係するといわれています。たとえば、難聴の方が、消極的になるとします。すると、難聴の方は徐々に社会的な孤立状態となり、その結果、認知症のリスクが上がるということが考えられます。(談:繁田 雅弘先生)

認知機能低下は予防できるかも??
予防可能な因子の割合は?

認知機能低下の危険因子のうち予防可能な因子は35%を占めており、その中では難聴が最も大きな割合を占めています。

 

早期に聞こえを改善する事の重要性

聴覚刺激が減少すると
認知機能に影響を及ぼす可能性があります

加齢性の難聴に対して、なるべく早期に介入して聴覚刺激を増やすことで、言語機能あるいは言語による情動といった*を活性化できる可能性があると考えています。逆にいえば、聴覚刺激が減ることで、脳内になにかしら変化が起ることが考えられます。実際、加齢性難聴の方には、脳の萎縮がみられることがあります。(談:小川 郁先生)

筋肉は使わないと衰える事と同じように、聴覚の神経細胞も刺激が少ない状態が続けば衰えると考えれば、納得ができますね。(談:繁田 雅弘先生)

*高次脳機能とは、言語、記憶、思考、空間認知、情動などの脳が持っている知的認知機能。聴覚も高次脳機能に関わるといわれている

これまでのお話から、難聴と認知症の関わりには、大きく2つの視点があるとわかりました。

  • 難聴が社会的な孤立につながり、認知症のリスクを増加させる可能性がある。
  • 難聴で聴覚刺激が減少することによって、脳内で何らかの変化が起こり認知機能に影響を及ぼす可能性がある。

補聴器の適切な活用と販売店の選び方

補聴器の適切な活用には一定期間のトレーニングが必要です。

認知機能低下の危険因子のひとつである難聴に関して、従来から行われている介入方法としては、補聴器の適切な活用があります。補聴器は眼鏡と違い、つけるだけでなく音を聞き取るトレーニングが必要です。
一般的には、補聴器をつけ始めてから少なくとも3か月~半年ほどは、定期的に補聴器の音量などを調節しながら、徐々に音を聞き取るトレーニングを続けます。補聴器をつけたばかりの頃は、雑音を含めて周囲の音が大きく聞こえますが、トレーニングを積むことで、徐々にその中から必要な音や言葉を聞き取れるようになります。(談:小川 郁先生)

 

補聴器を適切に使用できるようになるためには、一定期間のトレーニングが必要なんですね。
(談:繁田 雅弘先生)

補聴器を購入するは、正しい理解と継続的なケアが必要です。

補聴器の使用にあたっては、一定期間のトレーニングが必要であることを知らないために、耳に馴染まないと感じ、補聴器を有効活用できないという声をよく聞きます。なぜこのような状況が生まれるのでしょう。(談:繁田 雅弘先生)

問題は、補聴器を販売する際に、正しい情報提供が行われていないことにあると考えます。なた、適切な補聴器の使い方の指導と定期的な聴力の経過観察といった継続的なケアが行われないことも珍しくありません。(談:小川 郁先生)

それは問題ですね。どのようなところで補聴器を購入したらよいのでしょう。(談:繁田 雅弘先生)

きちんとトレーニングを行う販売店(*認定補聴器技能者が在籍する専門店)で正しい情報提供と継続的なケアを受けて購入すべきです。2018年より*補聴器相談医が補聴器の診療情報提供書を作成し、それに基づき販売店で補聴器を調整する流れを確立しました。さらに、医療費控除が受けられるシステムも構築しました。補聴器相談医の名簿は、日本耳鼻咽喉科学会のホームページに掲載されています。(談:小川 郁先生)

*認定補聴器技能者とは、補聴器の販売・調整に関して、基準以上の知識や技能を持つ公益財団法人テクノエイド協会に認定された資格者。

2020年12月01日